ごきげんよう、ねこててです。
※本記事は微ネタバレを含んでおります。
これから『僕は僕の書いた小説を知らない』を読まれる方はご注意ください。
今回する本はこちら。
『ドクター・デスの遺産』中山七里
2020年11月13日(金)に主演・綾野剛で映画化される話題作。
刑事・犬養隼人シリーズの4作目です。
他シリーズ作品を読んでいませんが、面白く読むことができました。
本作から読んでも、問題は無さそうです。

ユーチューブで映画CMを見て、続きが気になったので読んでみました



あの広告、たまに掘り出しものがあるんだよなー
あらすじ
警視庁に入った1人の少年からの通報。
突然自宅にやってきた見知らぬ医師に父親が注射を打たれ、直後に息を引き取ったという。捜査一課の犬養刑事は少年の母親が「ドクター・デス」を名乗る人物が開設するサイトにアクセスしたことを突き止める。
安らかで苦痛のない死を20万円で提供するという医師は、一体何者なのか。難航する捜査を嘲笑うかのように、日本各地で類似の事件が次々と発生する。
ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 裏表紙より



けっこうヘビーな題材だ



前回紹介した本とかなり毛色がちがうね…


ここから感想・微ネタバレあり!
此処から先の記事は一部、ネタバレ含む場合があります。
初読の方はご注意ください。
良かったところ
ストーリーテンポがいい



読みやすい本って、やっぱりテンポがいい
会話文が多用されているのも、一つの要因だと考えます。
また、どんでん返しの帝王の異名を持つだけあって、ラストスパートの勢いは 目を離すことができません。
退屈することなく読める本って凶器ですよね、ほんと。
主人公・犬養の感情の揺れが人間みを感じる
犬養は”刑事”という立場から、安楽死についてはネガティブなイメージを持っていましたが
- 床に伏している一人娘が、同じ状況に陥ったらという考え
- 実際にドクター・デスに依頼した遺族の思い
- 終末医療の現状
が募っていくうちに、安楽死の可否の間で揺れ動いていきます。
国の法律に従うべきであり、殺人を許すことのできない”刑事”としての犬養
難病の娘が安楽死を希望したら、苦しみから解放してあげたい”父親”としての犬養
グレーの中で悩む姿に自己投影し、安楽死について自分も考える
というのが、本作のテーマのひとつだと強く感じます。
解説までが作品
巻末の解説を務めるのは、宮下洋一氏(以下、宮下氏)です。
自身も『安楽死を遂げるまで』や『安楽死を遂げた日本人』といった 安楽死にまつわる本を上梓しています。
そんな宮下氏が、諸外国での安楽死の考えを交えながら、本作品を解説をします。
最後の宮下氏の語りは、ドクター・デスを代弁して私達に問題提起しているようにも思えます。
微妙だったところ
ドクター・デスという名前が絶妙にダサい
”死の医師”であることがひと目で分かるのは良いところだけど、なんでかダサいなと感じました。



デスって言葉の意味を理解しているからかな…



ドクター・サナトス(希)、ドクター・モルテ(伊)だとかっこいい?



それはそれで、分かりづらいかもね
ネーミングって難しい…
麻生の主張が好きになれない
犬養の上司である麻生は、ドクター・デスを「享楽殺人犯」と蔑んでいます。
そこには、患者本人や遺族の「苦しみたくないから、困窮しているから依頼した」という背景を考えず
「殺人を楽しみやがって!」と怒るのには、違和感を抱きました。
(私がドクター・デス寄りの考えだから、なおさら)
しかし、ドクター・デスを憎む側=安楽死反対派がいないと、 小説に深みがでないのも明白です。
同じ考えの人物しかいない小説なんて、面白くないですからね。
差異があるからこそ、再考する余地、物語の起伏が生まれると思いました。
最後に…


最初は「映画気になるけど、原作読めばストーリー分かるし、いいやー」と思っていましたが、
どんでん返しのラストがどのように表現されるのか、ドクター・デス役を誰が務めるのか…
気になるので、多分、この感じ映画見ると思います。
楽しみです。
それではごきげんよう、ねこててでした。
コメントお待ちしております